This Pub has been submitted to - but is not yet featured in - this journal.
This publication can be found online at http://jods.mitpress.mit.edu/pub/jp-violence-and-civil-disobedience.
暴力と市民的不服従
伊藤穣一
非暴力的な不服従やキャンペーンの有効性に関する思索.
訳:山形浩生 - 草稿。コメント、批判、参考文献や議論歓迎。継続的な会話の一部。
Inspired by The Politics of Nonviolent Action by Gene Sharp
3月に、 不服従とその重要性についてのブログ を書いた。6月に Forbidden Research という会議をメディアラボで開いた (この会議のためにm ss ng p eces は市民不服従についてのビデオを作った。これは ジーン・シャープの非暴力活動にインスパイアされたものだ)。 そこで話し合った話題の一つは、不服従と、何が「よい」不服従なのか、ということだった。会議ではレイド・ホフマンの資金による$250,000 不服従賞の創設を発表した。ぼくたちが問題としたのは「社会の不正義を支えている規範、ルール、法律などをねらった責任ある倫理的な不服従を最も有効に活用するにはどうすればいいのか」ということだった。
不服従賞についてアノニマス[1] に連絡を取ったら(かれらに「連絡」するにも限りはあるけれど)、かれら(またはアノニマスのだれか) は、ぼくが送ったメッセージに以下の改訂を行った(強調部分):
アメリカの市民権運動は、キングが市民的不服従を呼びかけない限り起こらなかった_が、その裏づけとしてはマルコムXと武装革命の脅しがあった。インドはガンディーとその支持者たちの平和的ながら決然とした不服従がなければ独立を実現できなかっただろうが、それと組み合わさっていたのがB・R・アンベドカールの武闘的抗議だった (https://en.wikipedia.org/wiki/B._R._Ambedkar)_.
[…]
そしてボストン茶会は、アメリカ革命の皮切りにはなれなかった_(これは入植者の植民地主義と、怒りにまかせた財産破壊の示威と組み合わさっていた。うん、この最後の例はいちばんすごいわけじゃないけど、おれたちがここで何を言いたいかはわかるだろ)_.
細かいところでは異論もあるけれど、「過激派」からの暴力の脅しがないと非暴力は有効じゃないのでは、という論点と問題提起は有効だと思う。[2]" レイド・ホフマンは、もしガンディーの敵がイギリスではなくヒトラーだったら成功できただろうかという問題を提起した。いい質問だ。「ときには暴力も必要」という発想は、確かに成り立つものだし、反論はむずかしい。
先月、ぼくはジョン・ルイスの [3] 講演を聴いた。かれは、自分が非暴力を厳守していることと、学生時代にジェイムズ・ローソン牧師とケリー・ミラー・スミス牧師が運営するクラーク記念ユナイテッドメソジスト教会の地下で、かれが学生時代に参加したワークショップについて語った。他の人々が殴ったりツバをはきかけたり、椅子から押し出したりするときにも、じっとすわっているというワークショップだ。それでもにっこりして前を向き、感情的にならず、殴り返したり暴力的になったりする衝動を抑えるよう学んだという。かれは、非暴力活動の中で殴られた数々の例について語った。
かれは1961年サウスカロライナ州での話をしてくれた。かれはフリーダムライドの途中で、KKKのメンバーに殴られ、血まみれで放置された。2009年に、かれを殴ったKKK団員の一人が息子をつれて議事堂のルイスを尋ねてきた。その人は70代で、息子は40代だった。その男は謝って、ルイスに許してくれるかと尋ねた。息子が泣き出し、そしてみんなが泣き出した。ルイスはかれを許し、みんな抱き合って泣いた。
ルイスは、非暴力は人間性が生まれる余地を残すのだと説明した。
ジョン・ルイス講演を聴いた翌週、マーシャル・ガンツ[4]と朝食を食べていて、非暴力について尋ねた。するとかれは、運動の成功における非暴力の歴史的重要性を強調した。また「radical flank effect」についても教えてくれた。そしてMaria J. Stephan and Erica Chenoweth『なぜ市民レジスタンスが成功するか:非暴力紛争の戦略的論理 (Why Civil Resistance Works - The Strategic Logic of Nonviolent Conflict)』を読むよう薦めてくれた。[5].これは非暴力キャンペーンと、暴力的なキャンペーンを比較して、その成功について研究した学術論文だ。その論文はこう始まる:
政治学者の間で主流の見方は、反対運動が暴力的な手法を選ぶのは、そうした手法が政策目標を達成するにあたり、非暴力的な手法よりも有効だから、というものだ。こうした想定にもかかわらず […]こうした非暴力キャンペーンの成功――特に同じ国々の一部で生じている昔からの暴力的蜂起と比べたときの成功――は系統的な検討を必要としている。
[…]
本分析の結果、主要な非暴力キャンペーンは53パーセントの成功率を達成しているのに、暴力的なレジスタンスキャンペーンは26パーセントしか成功していない。この成功には二つの理由がある。まず、キャンペーンが非暴力手法にコミットすることで、国内および国際的な正当性が拡大し、レジスタンスへのもっと広範な参加が促され、これが標的に対する圧力の増大につながる。立ち上がる集団の不満の認知は、その集団に対する内外の支援を高め、標的となる政権の孤立をもたらし、その政権の主要な政治、経済、そして軍事的な力の源すら弱体化させることになる。
第二に、政府は武装蜂起軍に対しては簡単に暴力的な反攻を正当化できるけれど、非暴力運動に対する政権の暴力は、政権に対する逆噴射を引き起こす可能性が高い。潜在的に同情的な世間は、暴力的な軍事蜂起については受容を超えた拡張主義、過激主義的な狙いがあるのではと見るのに対し、非暴力的な抵抗集団はそれほど過激ではないと考え、それによりかれらの魅力は高まり、交渉を通じた譲歩も手に入れやすくなる。
本論文の結果は、伝統的に優位にある敵に対する暴力的な抵抗こそが、政治目標実現のための最も有効な方法だという通俗常識に疑問を付すものだ。むしろ、非暴力的な抵抗は政治的暴力の代替となる強力な手法であり、民主・非民主的な敵に対する有効な挑戦をもたらし、ときには暴力的な抵抗よりも有効性が高いというのが本論の主張となる。
この論文によれば、そこで検討されたキャンペーン集合については、非暴力のほうが暴力よりも成功率が高かったけれど、非暴力がいつも成功するとは限らなかったことも示された――52パーセントの成功率しかない。
この論文はまた、戦略的非暴力と、原理的な非暴力との間に興味深い区別をしている。
戦略的非暴力抵抗は、原理的非暴力とは区別される。原理的非暴力は、暴力に対する宗教的、倫理的な反対に根ざしたものだ。原理的非暴力にコミットしている人の多くは、非暴力的抵抗を実践してきたけれど (e.g., ガンディー、マーチン・ルーサー・キング)、非暴力闘争の参加者の大半は、原理的非暴力には専念していない。非暴力闘争と原理的非暴力、平和主義、受動性、弱さ、孤立した街頭での抗議活動との同一視は、この現象についての誤解に貢献してきた。非暴力抵抗者たちは、暴力の脅しや利用を否定するけれど、非暴力運動にしばしば与えられる「平和的」というレッテルは、組織的な非暴力的抵抗が持つ、しばしばきわめて騒乱的な性格と相容れないものだ。非暴力抵抗は、広範な非協力と拒絶を通じて紛争の制御権を握ることで、敵の意志に逆らって要求を実現する。暴力的な恫喝は、敵に対する物理的暴力の脅しとなる。
ぼくはまた、非暴力が「弱い」という発想も誤解であり、しばしば行動したくてうずうずしている人々のオルグには不利になると考えている。
ジョン・ルイスは、かれがどれほど強く、規律正しいか、そして非暴力が暴力に比べていかにむずかしく、それでもいかにずっと戦略的で道徳的に正しいかを認識させてくれた。非暴力が常に勝利するという保証はない一方で、人道性と癒やしへの道を閉ざし、暴力を通じて紛争をエスカレートさせるのは、ほぼ常に正しい道とは言えない。不服従賞の受賞基準を考えるにあたり、ぼくは非暴力こそが受賞者を選ぶ最も重要な基準の一つであるべきだと強く感じている。

この投稿を読んで、マーシャル・ガンツは以下の論点をメールしてくれた:
非暴力をめぐる混乱の一つは、この用語が、それが何でないかという形で自分を定義していることだ。ガンディーはそれを「サティヤーグラハ」または「真実の力」と呼んだ。これは行動を指す用語で、行動から離れるものではない。南部、特にFarmworkersでこの点について訓練を受けたとき、暴力なしで「戦う」別の方法を提示できるだけの創造性がない限り、これはリーダーシップの失敗なのだということをはっきり言われた。唯一の戦い方として暴力に頼ってはいけないとみんなに言うだけでは不十分なのだ。

References

[1]"Anonymous (group)". Wikipedia. [https://en.wikipedia.org/wiki/Anonymous_(group)] Anonymous is a loosely associated international network of activist and hacktivist entities. A website nominally associated with the group describes it as "an Internet gathering" with "a very loose and decentralized command structure that operates on ideas rather than directives".
[2]"Radical Flank Effect". Wikipedia. [https://en.wikipedia.org/wiki/Radical_flank_effect] The radical flank effect refers to the positive or negative effects that radical activists for a cause have on more moderate activists for the same cause.
[3]"John Lewis". Wikipedia. [https://en.wikipedia.org/wiki/John_Lewis_(Georgia_politician)] John Robert Lewis (born February 21, 1940) is an American politician and civil rights leader. He is the U.S. Representative for Georgia's 5th congressional district, serving since 1987, and is the dean of the Georgia congressional delegation. His district includes the northern three-quarters of Atlanta.
[4]"Marshall Ganz". Wikipedia. [https://en.wikipedia.org/wiki/Marshall_Ganz] Marshall Ganz is credited with devising the successful grassroots organizing model and training for Barack Obama’s winning 2008 presidential campaign. He was an organizer for the Student Nonviolent Coordinating Committee.
[5]Maria J. Stephan and Erica Chenoweth. "Why Civil Resistance Works - The Strategic Logic of Nonviolent Conflict". International Security. Vol. 33. MIT Press, (2008): Num. 1. 7-44. [http://belfercenter.ksg.harvard.edu/files/IS3301_pp007-044_Stephan_Chenoweth.pdf]
Add to Comment
Creative Commons License
All discussions are licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
Submit
There are no comments here yet.
Be the first to start the discussion!